3月27日の株主総会で、オークネットの新たな代表取締役社長に藤崎慎一郎氏が就任した。しかし、世界は新型コロナウイルスが猛威を振るう大変に難しい時。この状況下で藤崎社長はどう陣頭指揮を執っていくのか。話しを聞いた。
コロナ禍という難しい局面での社長就任だった 藤崎社長(以下、敬称略) 私が社長に就いたのが国内でもコロナが広がり始めている時で、何をするにもコロナが引っ掛ってくる。そうした中でも、オークションを止めない、やり切らなければいけないという使命が我々にはある。社員を守りつつ、サービスレベルを保たなければならない、そのバランスをどうするかというのが最初の1ヵ月だった。
そうした中で、いち早く中古車事業者への支援策を打ち出した 藤崎 会員サービスを維持するだけでなく、会員以外に対してもオークネットのAA参加権開放と陸送補助をさせて頂いた。その一方で、社内では、リモートワークを推し進め、ピークで出社率2割まで実現した。現在も半分以上は在宅勤務としている。
事業者への支援策の結果は 藤崎 ライブAA、アイオークともにシェアは伸びた。リモートでの売り買いがこの状況下でフィットしたので、業界には貢献できたと思う。 世の中はデジタルトランスフォーメーションが推進され、デジタルへのシフトが求められている。そこはまさに当社の得意なところで、改めてその強味を再認識して頂いたお客様も多い。今後もリモート流通を業界に浸透させ、使って良かったと思われるものをめざしていきたい。
その環境下で、今後の中古車流通をどう考えているか 藤崎 当社としてはデータを活用して、という方向に進みたいのだが、そうするとやはり相場になる。ただ株式市場でもそうだが、相場はAIが人間には勝てないと思っている。それ故に、相場はピンポイントで幾らではなく、この車は状況がこうで、こういう要素で上下する、といった情報を出し、最終的に決断するのは出品者やバイヤーだと考えている。 つまり我々は、重要な情報を出して、それをベースに経営判断にしてもらえるような情報提供サービスをめざしている。
データ活用のイメージは 藤崎 最近、我々は『データ流通プラットフォーム』という言葉を標榜して考えている。これは当社の査定・登録アプリのサテロクで車両情報を入力すると、そこに紐づく情報が戻ってくるというイメージだ。 現状でも中古車事業者は、何らかの車販システムに車両データを入力しているが、そこで当社のサービスに入力すれば、良いフィードバックが来る。そうしたデータが増えれば、それが今度は誰かにとって有益な情報になり、その結果、業界全体にとっても有難い情報になる。それが当社が提案するデジタルトランスフォーメーション。その入り口はサテロクか、またはそれをアレンジしたものと考えている。
やはりデータが重要 藤崎 我々はデータが集まる所にいるが、業界が良くなり、皆が有難いと思えるような使い方を絶対に外さないように、と思っている。これは売り買いする人だけでなく、提携先であるAA会場も同様で、全員がハッピーになれるということが何よりも大事。 そして、ビッグデータは大きければ大きいほど皆がハッピーになるものだ。フェイスブックやアマゾンもそういう流れで、データを良いことに使おうと努めている。それによって業界、そして世の中が良くなっていくというものだ。
では、次は現状のテレビAAについては 藤崎 なぜオークネットに出品して頂けるのか、という魅力を高めていかないといけない。前述のデータを上手く活用して、『オークネットに出すのは安心感があるよね』という方向に、もう少しアクセルを踏んでいきたい。 市場(いちば)というのは、買い手、売り手とそれぞれの立場によって見方が変わるので、めざすものは誰しもが納得する市場。安心・安全で買って納得、売って納得。それは何かというと公平感だと思っている。
オークネットはこれまで色々な流通のサービスに取り組んできたが、今後、何か新しいものを視野に入れているのか 藤崎 そこは常に取り組んでいく。新しいものを業界に問いてみて、それが違うとなれば、また形を変えて提案する。これを止めてしまうと先に進まない気がするので、歩みを止めずにいきたい。 こうした中でも我々のプラットフォームの真ん中は、BtoB(業者間取引き)のマッチングであり、そこはしばらくは変わらない。
今年1月から社内の営業スタイルも変えた 藤崎 これまで通り直接お客様の所に行くのではなく、電話などを活用してリモートで営業するインサイドセールスに舵を切っている。もちろん会ってコミュニケーションを図るのが一番良いが、我々のお客様は全国にいるので移動に時間が取られて、すべてのお客様をフォローするのが困難だからだ。 この様な形で、全国のお客様のニーズをくみ取る営業活動を模索しているが、コロナ禍でむしろそうせざるを得ない状況にもなったで、一気にこの部分は進めていきたいと考えている。
その営業は具体的にはどのような感じか 藤崎 ワン・トゥ・ワンのマーケティングで、個々のニーズや購買履歴をみて、その人に響くような内容で電話も掛けるし、メールを送るようにしている。色々なツールも入れ始めているので、抜けや漏れもなく、きちんとアプローチできるようにしていく。 例えて言えば在庫登録が分かりやすく、市場でハイエースが良ければ、それを持っている会員に対して『ハイエースがいいですよ』と情報を提供する活動。こうしたワン・トゥ・ワンのマーケティングもここにきて、手応えを感じられるようになってきた。
最後に、改めてオークネットの役割、そして将来像は 藤崎 業界にとって公平・公正で、『オークネットなら安心。あそこは公正、フェアだから』と言われる所を突き詰めてやっていきたい。そのためにはいま一層、信頼を頂くこと。その上で、我々の提供する情報をより信じてもらえれば、我々もさらに信頼たるものを提供していける。 これは昔からそうで、AIS検査も信頼を頂いたから、どんどん改善されて良くなり、検査が信用たるものになった。それが我々のDNAであり、将来も変わらずめざすところ。 そして会員はもちろん、現車会場も当社のお客様。我々のサービスを使って頂いている方々が、喜んで頂けるものを今後も考えていく。
〈取材メモ〉社長に就任して変わったことは「一段上の視点、経営視点で自然と考えるようになった。組織、人がどうあるべきかなど事業自体を一歩、俯瞰するようになったこと」と話す。趣味は「ここ2年くらいで急にF1が好きになり、夜な夜な観ている。あとはゴルフを少々ですね」という。昭和50年11月生まれの44歳。
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