ヤナセ(𠮷田多孝社長)が輸入車専門AAのジップを子会社化し、4月からオークション事業の運営をスタートした。ジップの新社長には、4月10日付でヤナセの営業統括本部拠点経営推進部部長を務めていた松本伸氏が就任。今月号では、松本新社長にジップ取得の経緯や目的、今後の舵取りなどを聞いた。
ヤナセは100年を超える歴史がある。AA事業は初か 松本社長(以下、同じ)「1922年(大正11年)頃に、東京・芝浦の地で輸入車のオークションをやっていた記録が残っている。パーツ取りや『ジャンコ屋さん』と呼ばれる方々が参加していたようだ」
なぜ今、AA事業に参入したのか 「オークション事業を今、始めたいと考えた訳ではない。ジップとはずっと、出品社側として良い関係でやって来たなかで実現したこと。ヤナセの中古車ビジネスにおいて、業販も重要なパートのひとつだったこともあり、どちらからともなく実現した。従って、他のオークション会場を候補に挙げたこともない」
これまでの関係は 「ジップとは長い付き合いで、とくに西日本では大阪会場に出品していた。「ヤナセコーナー」も、定期的に実施しているという密な関係だ」
ジップ取得の目的は 「ヤナセに入ってきた中古車を、有効に役立てていくための重要なパートナーがジップだ。輸入車専門のディーラーであるヤナセと、輸入車専門オークションのジップを合わせれば、良いシナジー効果が生まれる。今回の取得もそれが目的の一つだ」
株式の取得割合は 「4月10日に全株式の99%を取得させて頂いた」
人事の変更は 「私のほか、ヤナセの松本幸夫代表取締役専務執行役員がジップの取締役を兼務し、総務責任者も1名出向している。それ以外で大きな変更はない。前社長の神川薫氏は会長として残って頂き、これまで役員として務めて頂いた小貫氏と専務の倉田氏も留任、大阪の会場長もこれまで通りお願いしている」
ジップ2会場の感想は 「大阪会場の知名度はかなり高いと実感している。一方、東京会場は独立開催に移ったばかりで、早めに軌道に乗せたいと思う。両会場とも、スタッフについては優秀な方が多く、地道に営業訪問も重ねていて、とても心強い」
ヤナセの下取り・買取り規模は 「年間4万台から4万5000台だ。これは買取りやデモカーも含むがほとんど下取りで、輸入車と国産車の比率では圧倒的に輸入車が多い。なかでも、最近は高年式車を中心に3年落ち以内がメインで、小売り単価でいうと400万円くらいがアベレージになっている」
従来の販路は 「ヤナセのブランドスクエアやメーカー認定中古車などで、小売りに回す割合が3割強を占めている。残りが業販、いわゆるオークションへの出品だ」
ジップAAへの出品を増やすのか 「あまりドラスティックな変化を起こそうとは考えていない。しばらく研究して研究して……。それに、東京も大阪も同じく、現在の体制では営業やそのフォローについても、拡大に対応できるだけのスタッフが足りないのが現実だ」
AAでまず取り組むことは 「一般会員の増強を図りたい。新規会員の募集や出品、落札数を増やしたいと考えている。ヤナセがジップを取得したことがプラスのイメージに働き、『良い車が集まる会場』と思ってもらえるようになれば」
具体的な施策は 「取引に対する手数料のインセンティブ制度を考えている。台数毎にきめ細かくクラス分けを行なうなど、誰が見ても公平公正な制度をつくりたい」
出品車のタマ揃えについては 「輸入車の小売り現場では、低年式・過走行で、低価格の中古車がかなり売れるようになってきている。ヤナセでも『アウトレット』を設け、10年落ちの中古車を小売りに回している。ジップでは、30万円MAXのような出品車も強化していきたい」
大阪ではヴィンテージコーナーを設けている 「ヤナセにはクラシックカーセンターがあり、整備を手掛けている。こうした特殊な車は、扱えるAAも少ないと思われるので、さらに集まる会場にしたい。東京でも、屋根付きのストックヤードが確保できれば取り組んでいく」
話は変わって、松本社長はこれまでセールス一筋だった 「入社して約30年間、新車セールスだった。私自身は物を売ることが好きで、負けず嫌いだと思う。セールスの後は拠点の教育を担当し、営業本部長を相手に直接指導もしていた」
最後に松本社長の方針は 「ヤナセでの直近の仕事は、各店舗の強みと弱みを把握して、コンサルするような内容だった。そこが今回の人事に影響しているのかも知れない。ジップでもこの経験を活かして、数字的な視点で経営をみていきたい。それと同時に、ジップの社員全員と会員から『ヤナセと一緒になって良かった』と思って貰えるような会社にしていきたい」
プロフィール 昭和36 年生まれ。58 歳。趣味はオートバイと絵描き。愛車は広島で保管中。「しばらくは我慢です」と笑う。絵は似顔絵が得意で、ヤナセ社員からも「似てます(笑)」と評判が良い。
|